英語 de 敬語 ③謝罪の仕方

DCのコミュニティ・ペーパー、『さくら新聞』で書かせていただいているコラム「英語 de 敬語」。 今月はちょこっとハロウィンに絡めて、謝罪の仕方についてです。

My column this month in “Sakura Shimbun,” a Japanese community paper in DC and Houston, touches upon Halloween and what we fear most in business – and how to fight that by apologizing effectively. Once again, I’m so grateful for this opportunity!

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もうすぐハロウィン。街中がお菓子と偽物のお化けやモンスターで溢れています。

しかし、ビジネスで怖いのは、モンスターではありません。むしろ、クライアントや取引先の気分を害したり、信頼を損ねたりすることが懸念の一つではないでしょうか。

そういった場合に備えて、第3回は謝罪に焦点を当て、よく知られた I’m sorry 以外の言い方をご紹介します。

まず、アポのタイミングが合わないなど、軽い謝罪の場合。こちらの都合がつかない時を相手が提案した場合は、 Unfortunately, I will be traveling for business that week. など、ちょっとした謝罪で済みます。

しかし、相手が特に忙しい方で、随分前に申し込んだアポが実現しそうとなると、指定された日を断わるのにも気を遣います。その場合には、「たまたま状況がよくないことが残念」という意味合いのある unfortunately よりも、個人的な悔いの気持ちを込めて regret を使うことができます。回答に謝意を表明しつつ、 I regret that I will be out of town to attend my friend’s wedding. など、動かせない日程なのを明らかにして、他の日について聞くのがよいでしょう。

他にも謝罪の気持ちを真摯に表明する言葉として、 I’m afraid that . . . を使うこともできます。 I’m afraid that I did not realize we had misspelled your name in the book. など、組織としての間違いでも責任者や担当者として個人的に謝罪することができます。相手との関係やミスの内容によってはメール以外に電話や訪問をすることが丁寧かもしれませんが、その場合には、もう少し口語的な I’m very sorry などを織り交ぜつつ、改善する決意を伝えられるでしょう。

深い謝罪が必要な場合は、 Please accept my sincere apologies that I must cancel my contract with you. などとすることができます。もう少し軽くて済む場合には sincere を抜くことができますし、ごく小さなミスについては、更に短縮して My apologies, I forgot to attach our estimate to my last email. などと書けます。

日本から見ると、訴訟大国の米国では安易に謝らない方がよいというイメージがあるかもしれません。損害があればもちろんそうですし、組織としてミスを犯した場合は、十分周りと話し合ってから外部に対応した方がよいでしょう。

他方、日常生活でもビジネスでも、軽いものから深刻なものまで、謝罪が必要な場面に必ず遭遇します。本当に相手の信頼を失うこともありますが、多くの場合、心を込めた謝罪と改善に向けた努力はきちんと伝わり、理解してもらえると感じます。

怖いのは相手ではなく、間違いの後に膨らむ、相手の気持ちや反応に対する想像です。それこそが、謝罪で退治できる偽物のモンスターかもしれません。

英語 de 敬語 ②再会での挨拶の仕方

DCのコミュニティ・ペーパー、『さくら新聞』で書かせていただいているコラム「英語 de 敬語」。第二回は、再会での挨拶についてです!

今回は一つ、あとがきがあります。ここで例として挙げた “Long time no see”、4つの言葉が音節一つずつで言いやすく、なんだか可愛くて大好きでした。でも、記事を提出した後にもう少し調べたところ、中国からの移民、もしくはアメリカ先住民の英語から来たという語源が差別的なので使うべきでないとする人も、ごく少数いるようです。他方、もはや一般化されているのだから問題ないとする人もいて、賛否両論のようです。米国で移民やマイノリティが大変な思いをしている今だからこそ、そして私もマイノリティだからこそ、誰かが気分を害する可能性のある言葉は使うのをやめるべきかな、と考えさせられました。提出前に気付くべきだったと反省すると同時に、あまりによく使われているので語源を気にしない人も多いかもしれない、とも感じています。記事には入れることができなかったものの、この言い回しのこういった背景も皆様に伝えたいと思って、本投稿に書きました。

My second column in “Sakura Shimbun,” a Japanese community paper in DC and Houston, is about greetings when you see someone you’ve met before. Once again, I’m so grateful for this opportunity!

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第二回は再会に焦点を当てます。  

誰かに再会したとき、最初に交わす言葉として頻出するのは、It’s good to see you とその後に続くHow have you been? です。出勤中に遭遇したり、他の人が一緒にいたりして時間がない場合は社交辞令ということもありますが、そうでなければ近況報告だけで話が膨らみます。久々に会った場合には It’s been a while、意外な場所で会った時には What a nice surprise to see you here などが使えます。目上の方には適切ではありませんが、元同僚などある程度親しい間柄なら、前者にはピジン英語(中国語なまりの英語)から来た Long time no see、後者には It’s nice to run into you などとも言えます。

以前仕事で一緒になった人とのメールでの「再会」は、近況について聞くと、本題以外にもその話題を続けるプレッシャーが生じるため、I hope you have been wellI hope this email finds you well など断定形で書いた方がお互い楽な場合もあります。その応用として季節に触れる表現も、日本語の優美な表現に比べてあっさりしており、I hope you’re having a wonderful summer so farI hope you’re enjoying the beautiful fall weather などと書けます。前回の仕事に触れてお礼を述べるのが丁寧ですが、Thank you again for kindly speaking at our conference last month など、日本語の「先日はどうもありがとうございました」と違い、具体的に書いた方がよいでしょう。スポンサーなど、日頃からお世話になっている方には、Thank you for your ongoing support of our company など、もう少し大まかに謝意を伝えることができます。

ネットワーキングにおいては、レセプションなどで名刺を交換した後、再会をお願いすることもあるでしょう。最後に会ってから時間が空いてなければ、上記の表現の代わりに、I enjoyed hearing about your work as an attorney など前回の会話の内容に触れつつ、I would like to request an informational interview to learn more about your companyI hope to visit your office to discuss how my organization might serve you などと具体的になぜ会いたいのかを明確にします。日程については、sometimenear future だと漠然としすぎてうやむやになってしまう可能性もあるため、in the coming weeksin the next month or so と少し幅広い日程を提示すれば、相手も回答しやすいでしょう。

ワシントンDCでは、才能や魅力に溢れる多くの人に会う機会がありますが、誰もがすぐに良い友人関係や仕事関係を築けるわけではありません。人に囲まれる都会だからこそ、気の合う人が見つからないときは、なおさら孤独感を感じることもあります。でも、たまたま出会えた縁をつかみ、再会し続けることで、無数の出会いの中から特別なものを見つけ、人生に取り込んでいくことも可能です。その偶然を必然に変える過程こそが、再会の魅力ではないかと思います。

英語 de 敬語 ①自己紹介の仕方

第一面に「新連載」と書いていただき感動しました!

DCとヒューストンのコミュニティ・ペーパー、『さくら新聞』でコラムを書かせていただくことになりました。「英語 de 敬語」という連載です。 いろいろな状況を想像したり、決まったテーマや文字数の中にどうやって自分らしさを出すか考えたり、とっても楽しいです。素晴らしい機会をいただけたご縁に感謝しています! 8月24日に出た第一回の原稿は下記の通りです。

I now have a column in Sakura Shimbun, a Japanese community paper in DC and Houston. It’s about English phrases that can be used for business or other formal occasions. The first of the series is about self-introduction, and came out on August 24. I’m so grateful for this opportunity! The text is as follows.

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初めまして、岡崎詩織と申します。日米双方で子供時代を過ごし、コミュニケーションで苦労した経験を糧に、今は英語と日本語で広報や通訳の仕事を行っています。本連載では、ビジネスの場面で使える丁寧な言い回しを取り上げたいと思います。

初回は自己紹介に焦点を当てます。

英語の授業で頻繁に登場するフレーズ、My name is . . . は、実際には、事前登録した場(イベントの受付、予約していたレストランや診察室など)であったり、誰かが自分の名前を間違えたためそれを訂正するといった場合でない限り、面と向かって使うことはなかなかありません。Hi または丁寧な Hello の後に I’m . . . と続けて名乗りましょう。

Nice to meet you の後に続く日本語の鬼門フレーズ「よろしくお願いします」は、ビジネスの場では I look forward to working with you が使えますが、それ以外では不要です。ビジネス以外の場面で筆者がこの日本語を訳さざるを得ない場合には、 I look forward to getting to know you などとしますが、本来は家族・友人の結婚相手や親友など、今後長く親密な付き合いとなる場合に使うフレーズです。

自分から知らない人にメールや電話をする場合には、My name is . . . が妥当です。メール上の「初めまして」には Nice to e-meet you などが使え、第三者が紹介した場合には、As mentioned by Shiori, I work at . . . といった形で、紹介者が使った内容を簡単に繰り返すことでより強く印象に残るかと思います。

ワシントンにおいて欠かせないのがネットワーキング。誰も知る人がいなくても、仕事やキャリアアップのため、イベントに参加しなくてはならないことがあります。レセプションにおいて重要なのが「スモールトーク」と言われる、ちょっとした会話です。ワシントンでよく聞かれるのが、生業を遠回しに聞いた What do you do? というフレーズです。I’m a researcher specializing in . . . といった形で、職業を簡単に説明して返します。また、人の往来が激しい街ならではの言葉として、なぜワシントンに来たのかを聞く What brought you to DC? もあります。こちらはもう少し複雑で、I’m an exchange student at . . . I’m here with my spouse, who . . . といった形で、来たきっかけも絡めて返します。

人間関係が苦手な筆者は、電話の前に文言を下書きし、緊張のあまり早口で読み上げて相手を混乱させたり、勇気を出して一人でレセプションに参加しても誰とも話せなかったり、といったことを経験し、場数を踏んで少しずつ自信がついてきました。これらの言い回しが少しでも役に立てれば幸いです。

紙面には画像やプロフィールも掲載していただきました